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【リーダーシップ開発の新常識:第1回】 いかにしてリーダーシップは生まれるのか?

今回お届けするのは、「リーダー不足」に頭を悩ませる経営者・人事の皆様に向けた連載コラムです。
変化が激しく先行きの見えないビジネス環境において、いかにして組織の中でリーダーを育てるか?

神戸大学大学院教授で経営組織論、組織行動論、経営管理論を専門とする鈴木竜太氏が、
今月から全7回にわたってこの課題解決について解説していきます。

なお、本記事は書籍『リーダーシップの科学』(ダイヤモンド社)をもとに一部抜粋・編集して執筆していきます。

目次[非表示]

  1. 1.リーダーシップの定義
    1. 1.1.関係性の中に宿る「共通目標」へのプロセス
  2. 2.リーダーシップの構造
    1. 2.1.成果からの逆算による「働きかけ」の設計
    2. 2.2.リーダーシップの成功条件
    3. 2.3.一貫したプロセスの実現と関係性の重要性

リーダーシップの定義

関係性の中に宿る「共通目標」へのプロセス

日常会話やビジネスシーンにおいて、「あの人にはリーダーシップがある」といった言及がなされることは多い。しかし、その概念を深く追求していくと、多くの人が個々に異なるイメージを抱いていることに気づく。ある人は強力な牽引力を、またある人は献身的な支援を想像するだろう。しかし、学問的な知見に依拠するならば、リーダーシップとは決して属人的なカリスマ性や役職の特権ではない。現代のリーダーシップ論の核心にあるのは、他者と関わり合い、共通の目標達成に向けてプロセスを促進させる「関係性の中の機能」という理解である。

学術的に定義を掘り下げると、リーダーシップの本質は「影響力の行使」にある。リーダーはフォロワーに対し、何をすべきかという方向性を示し、どのように取り組むべきかという理解を促す。重要なのは、これがリーダー単独の業績ではなく、個人や集団全体の努力を引き出し、円滑化させるプロセスである点だ。この定義を前提とすることで、私たちはリーダーシップという曖昧な概念を「手に負えるもの」として再定義できる。

この定義には大きく分けて三つの柱が存在する。第一に、リーダーシップは常に他者の存在を前提としている。フォロワーがいなければ、リーダーシップは成立し得ない。つまり、リーダーの側に一方的に宿る性質ではなく、リーダーとフォロワーの「関係性」から生まれるものなのである。第二に、リーダーとフォロワーという役割は固定的なものではないという点だ。公式な役職者が必ずしもリーダーシップを発揮するとは限らず、状況に応じてその場に居合わせた誰かがリーダーとなり得る。リーダーシップが発揮されたとき、その関係性の中で初めて両者の役割が決まるのである。第三に、最も重要な「目標の共有」がある。個人の利益や私的な欲求を追求するだけの振る舞いは、リーダーシップとは呼ばない。あくまで集団が共通の目標を達成するための活動であることが、リーダーシップの正当性を担保するのである。

どれだけ巧みに人を惹きつけたとしても、その活動がフォロワーと目標を共有した上でのものでなければ、それはリーダーシップではない。リーダーシップとは単なる人心掌握術ではなく、共有された目的に向かって努力を促進させる、極めて建設的かつ目的論的なプロセスなのである。

リーダーシップの構造

成果からの逆算による「働きかけ」の設計

リーダーシップを実践しようとするとき、多くのリーダーが陥りがちな罠がある。それは「自分がどのようなリーダーであるべきか」あるいは「どのようなリーダーシップスタイルを用いるべきか」という、自身の振る舞いに焦点を当ててしまうことだ。しかし、リーダーシップの構造を正しく理解するならば、思考の起点は常に「逆」でなければならない。

リーダーシップは「リーダーの働きかけ」が「フォロワーの行動」を規定し、それが「成果」へと結びつくプロセスである。このとき、多くの人が陥る思考の順序は、「リーダーフォロワー成果」だ。しかし、真に効果的なリーダーシップを設計するためには、「成果」から出発し、逆算して論理を組み立てる必要がある。

まずは、どのような成果や目標を達成すべきかという点を確定させる。そこから、その目標を実現するためにフォロワーにはどのような行動が求められるのか、どのような能力やモチベーションが必要なのかを特定する。その後に初めて、自分自身がどのような働きかけを行うべきかという問いに辿り着くのである。この「成果からの逆算」という視座が欠けていると、どんなに優れたスタイルや手法を模倣したとしても、的外れな指示や活動に終始してしまうことになる。

また、ここで言う「働きかけ」とは、必ずしも雄弁なプレゼンテーションや明快な命令を指すのではない。例えば、組織内の利害調整や、適切な資源配分、あるいは周囲の心理的安全性への配慮など、一見すると地味な行動であっても、それがフォロワーの行動を規定し成果を促進するシグナルとなるならば、それらすべてがリーダーシップの一環となる。リーダーの言葉や表情、そして時に沈黙や存在感そのものが、フォロワーにとっては重要なメッセージとして伝わる。リーダーシップをプロセスと捉えるならば、リーダーのあらゆる振る舞いが「働きかけ」として機能し、最終的にはフォロワーの行動を左右するインプットとなることを意識する必要がある。リーダーの役割は、自らを飾ることではなく、目標というゴールから逆算して、フォロワーの行動を成果へと導く「一連のシグナルの設計者」となることなのである。

リーダーシップの成功条件

一貫したプロセスの実現と関係性の重要性

リーダーシップの成功を定義することは難しいが、論理的にいえば「リーダーの働きかけが、意図したフォロワーの行動を喚起し、それによって想定した成果が達成されること」を指す。この道筋において、どこかが切断されれば「失敗」となる。

失敗には大きく分けて二つの形がある。一つは「プロセスの失敗」であり、リーダーの働きかけがフォロワーの行動を動機づけられなかった状態を指す。どんなに正しい戦略や目標であっても、フォロワーが動かなければ成果は生まれない。もう一つは「結果の失敗」であり、フォロワーがリーダーの期待に応えて行動したとしても、それが目指した成果に結びつかなかった状態である。あるいは、成果は出たとしても、それが偶然の産物であったり、想定外の副産物であったりする場合は、リーダーシップの成功とは呼べない。リーダーシップとは、意図した働きかけが意図した行動を生み、意図した成果に辿り着くという一貫した因果のパスをつなぐことである。

リーダーシップの成功には、「短期的な成果」のみならず「長期的な成果」も考えておく必要がある。短期的な成果とは、現在の業務目標の達成や役割分担の遂行を指す。これはマネジメント的な側面が強く、目先の成果を確実に積み上げることで組織の安定を生む。一方、長期的な成果は、フォロワーの育成やキャリア開発、あるいは組織の将来像やビジョンの共有といった「変革」に結びつくものである。優れたリーダーは、目先の数字を追いかけながらも、常に「今期だけでなく次期やその先にも高い成果を得るには?」という組織の未来も意識している。短期の安定と長期の成長をバランス良く両立させることが、リーダーシップを継続的に発揮するための鍵となる。

さらに見落としてはならない成功条件がある。それは「リーダーとフォロワーの接点の質」である。どれほど洗練された働きかけの理論を学んでも、フォロワーとの物理的・心理的な時間が不足していれば、そのシグナルは正確に届かない。だからこそ、リーダーはフォロワーと直接的に関わる時間を確保し、信頼という基盤を構築しなければならない。結局のところ、リーダーシップが「関係性」から生まれるものである以上、その関係性を育む地道な接触こそが、あらゆる戦略的働きかけを機能させるための、最も強固な土台となるのである。


(本記事は、書籍『リーダーシップの科学』の第1章をもとに執筆したものです)  

鈴木竜太 氏
(神戸大学大学院経営学研究科長・神戸大学経営学部長)

『人を動かし、成果を生み出すリーダーシップの科学』
鈴木竜太 著/ダイヤモンド社)

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