catch-img

管理職になりたくない人が増える理由とは?人事ができる5つの対策

「管理職への昇進を打診しても本人が希望しない」「将来の管理職候補がなかなか見つからない」といった課題を抱えている企業もあるのではないでしょうか。

こうした状況を受け、社員に管理職として働くことの魅力やメリットを伝えている企業もあると思われます。しかし、会社から期待されていることや昇進のメリットを伝えるだけでは、本人が抱えている不安や不満を解消できない場合があります。まずは、本人が管理職を希望しない背景や理由を確認し、その原因に応じた対応を検討することが重要です。

本記事では、管理職になりたくないと考える主な理由と、人事が検討したい5つの対策を解説します。段階的にリーダー経験を積んでもらう方法や、本人のキャリアを起点に管理職という選択肢を考えるアプローチについても紹介します。

目次[非表示]

  1. 1.管理職になりたくない人が増えている理由
    1. 1.1.管理職の業務負荷が大きく見える
    2. 1.2.責任と待遇が見合っていないと感じる
    3. 1.3.管理職という仕事に魅力を感じられない
    4. 1.4.自分にマネジメントができると思えない
    5. 1.5.管理職以外のキャリアを望んでいる
  2. 2.「管理職になりたくない」を説得するだけでは解決しにくい
  3. 3.管理職になりたくない理由別に、人事の打ち手を考える
    1. 3.1.理由①「仕事が大変そう」なら、管理職の負荷を見直す
    2. 3.2.理由②「割に合わない」なら、管理職手当・待遇を確認する
    3. 3.3.理由③「管理職に魅力を感じない」なら、仕事の実態と魅力を伝える
    4. 3.4.理由④「自分にはできない」なら、段階的にリーダー経験を積んでもらう
    5. 3.5.理由⑤「自分のキャリアと合わない」なら、本人のWillから考える
  4. 4.「管理職になりたい」と思える環境を人事・会社側がつくる
  5. 5.まとめ

管理職になりたくない人が増えている理由

管理職への昇進に対する考え方は変化しています。パーソル総合研究所の「働く10,000人の就業・成長定点調査2026」では、「現在の会社で管理職になりたい」と回答した人は15.7%でした。2021年の24%と比較しても低い水準となっており、管理職への昇進を希望する人の割合は近年低下しています。

画像引用元:株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査2026」

こうした変化を「若い世代は昇進意欲が低い」と世代特性だけで捉えると、適切な対策につながらない可能性があります。管理職になりたくない背景には、現在の管理職の働き方や待遇への不安、マネジメント経験の不足、本人が描くキャリアとの違いなど、複数の理由があります。

出典:株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査2026」

管理職の業務負荷が大きく見える

プレイヤーとして自身の業務を担当しながら、部下育成や評価、チーム運営まで担う管理職も少なくありません。身近な上司が多くの業務を抱え、残業や会議に追われている姿を見ていれば、「管理職になったら今より仕事が増える」と感じるのも自然です。

特に、昇進後もプレイング業務がほとんど減らない職場では、現在の仕事に管理業務が上乗せされるように見えます。こうした実態が、管理職への心理的なハードルを高める要因となります。

責任と待遇が見合っていないと感じる

管理職になると、部下の育成や評価、組織目標の達成など、担う責任が増えます。

一方で、昇進による給与の上昇幅や管理職手当の額が小さければ、「責任だけが増える」と受け止められることがあります。働き方によっては、一般社員時代の残業手当を含めた給与との差を感じにくいケースもあります。

待遇への不満は、本人の意欲や考え方だけで解決できるものではありません。業務負荷や責任の範囲と合わせて、制度面から確認する必要があります。

管理職という仕事に魅力を感じられない

社員にとって、日々接している上司は「管理職になった自分」を想像する身近なモデルでもあります。毎日遅くまで働いている、会議に追われている、経営層と部下の間で調整に苦労しているといった姿ばかりが見えていれば、管理職に対して前向きなイメージを持ちにくくなります。

一方で、チームで成果を生み出すことやメンバーの成長に関わることなど、管理職ならではの仕事の面白さは、外から見ているだけでは分かりにくいものです。管理職の負担だけが見え、仕事の魅力ややりがいを知る機会が少ないことも、昇進を希望しない理由の一つと考えられます。

自分にマネジメントができると思えない

これまでプレイヤーとして成果を出してきた社員であっても、人を育てたり、チームを動かしたりした経験が十分にあるとは限りません。部下へ適切にフィードバックできるか、年上のメンバーをマネジメントできるか、チームの成果に責任を持てるかなど、経験したことのない役割に不安を感じる人もいます。

「自分には管理職は向いていない」という認識の背景には、能力そのものではなく、マネジメントを経験する機会がなかったことが影響している場合もあります。

管理職以外のキャリアを望んでいる

キャリアアップの方向性は、管理職への昇進だけではありません。専門性を高めたい、特定の分野でプレイヤーとして活躍したい、新しい事業や仕事に挑戦したいなど、本人が目指すキャリアによって希望する道は異なります。

管理職になることが本人の将来像と結びついていなければ、昇進を魅力的な選択肢として捉えにくくなります。そのため、管理職になりたくないという声を一律に「昇進意欲が低い」と捉えるのではなく、本人がどのようなキャリアを考えているのかも確認することが必要です。

「管理職になりたくない」を説得するだけでは解決しにくい

管理職への昇進を希望しない社員に対して、「管理職になれば成長できる」「会社から期待されている」と伝えることもあります。しかし、本人が感じている問題と会社側が伝える内容がかみ合っていなければ、昇進への不安は解消されません。

「大変そう」という言葉一つを取っても、業務量への不安なのか、マネジメント経験がないことへの不安なのかによって、必要な対応は変わります。まずは本人の言葉の背景に何があるのかを確認することが、人事の打ち手を考える出発点です。

▼人事が確認したいこと

本人の認識

人事が確認したいこと

大変そうだからなりたくない

実際に管理職の業務量が過剰になっていないか

責任に対して割に合わない

役割・責任と待遇のバランスは取れているか

管理職に魅力を感じない

管理職の仕事や魅力を知る機会があるか

自分にはできそうにない

マネジメントやリーダー経験を積む機会があったか

自分のキャリアではない

本人はどのようなキャリアを実現したいのか

理由が異なれば、人事が取る対策も異なります。本人のマインドセットだけの問題と捉えず、業務環境や制度、育成機会なども含めて確認することがポイントです。

管理職になりたくない理由別に、人事の打ち手を考える

管理職になりたくない社員への対応では、昇進を受け入れてもらうこと自体を目的にするのではなく、「なぜ管理職を選びたくないのか」を整理します。ここでは、5つの理由に分けて人事が検討したい対策を紹介します。

理由①「仕事が大変そう」なら、管理職の負荷を見直す

実際に管理職が多くの業務を抱えている場合、社員に管理職の魅力を伝えるだけでは解決しません。まず、現在の管理職がどのような働き方をしているのかを確認します。

▼確認ポイント

項目

確認する内容

プレイング業務

管理職自身が担当する実務の割合が高すぎないか

マネジメント業務

部下育成・評価・会議などにどの程度時間を使っているか

業務分担

管理職に特定の仕事が集中していないか

責任と権限

求められる責任に対して必要な権限が与えられているか

支援体制

管理職が困ったときに相談・支援を受けられる仕組みがあるか

管理職が実際に疲弊しているのであれば、「管理職はそれほど大変ではない」と伝えてイメージを変えようとするのではなく、そのイメージを生んでいる職場環境を見直すことが先決です。

業務の棚卸しや分担、管理職同士が相談できる機会の設置なども含め、継続してマネジメントできる環境になっているかを確認します。

理由②「割に合わない」なら、管理職手当・待遇を確認する

責任や業務量に対して待遇が見合っていないという声がある場合は、制度面の確認が必要です。管理職になると給与がどの程度変化するのか、管理職手当はどのように設定されているのか、責任や業務量と報酬のバランスが取れているのかを確認します。

「管理職としてのやりがいを理解してもらえばよい」と待遇の問題を本人の意識に置き換えてしまうと、本来見直すべき制度上の課題を見落としかねません。単純に管理職手当の金額だけを見るのではなく、役割・責任・業務量・権限・報酬のバランスが取れているかという視点から検討することがポイントです。

理由③「管理職に魅力を感じない」なら、仕事の実態と魅力を伝える

管理職の大変さは、周囲からも見えやすいですが、仕事を通じて得られる経験ややりがいは、実際に担った人でなければ分かりにくい面があります。

人事としては、管理職の業務内容を説明するだけでなく、どのような経験を積めるのかまで伝える機会を設けます。

管理職になることで、次のような経験を積めます。

  • 自分一人では実現できない成果をチームで生み出す

  • メンバーの成長やキャリアに関わる

  • チームや事業を動かす経験を積む

  • 自身で判断・意思決定する範囲が広がる

  • 経営に近い視点から組織を見る

現役管理職との座談会やキャリアイベントなどを通じて、実際の仕事や経験について生の声を聞ける場を設ける方法もあります。ただし、魅力だけを伝えて負担の実態を隠すのでは逆効果になりかねません。難しさも含めて仕事の実像を伝えたうえで、管理職という仕事について本人が判断できるようにします。

理由④「自分にはできない」なら、段階的にリーダー経験を積んでもらう

人をマネジメントした経験がない社員にとって、「次から管理職を任せたい」と言われることは大きな変化です。そこで、管理職になる前から小さなリーダー経験を積める機会を設けます。

▼段階的にリーダー経験を積むイメージ

メンバー
↓
後輩指導を担当
↓
プロジェクトリーダー
↓
小規模チームのリーダー
↓
管理職

後輩指導を任せる、プロジェクトの進行を担当してもらう、小規模なチームを率いてもらうなど、段階的に「人を通じて成果を出す経験」を増やします。併せて、管理職候補者向けの研修や、上司・先輩管理職によるフォローを組み合わせれば、経験を振り返りながらマネジメントに必要な知識やスキルを身につけられます。

最初から「管理職になれるか、なれないか」と考えるのではなく、小さな経験を重ねるなかで「自分にもできそうだ」と感じられる状態を目指します。

理由⑤「自分のキャリアと合わない」なら、本人のWillから考える

本人が専門職として力を伸ばしたいと考えているのであれば、「会社が期待しているから」という理由だけで管理職を勧めても納得感は得にくいです。まずは、本人が将来どのような仕事をしたいのか、どのような価値を生み出したいのか、どのような経験を積みたいのか、Will(価値観や意志)を対話によって整理します。

そのうえで、本人が描くキャリアのなかで、マネジメント経験にどのような意味があるのかを一緒に考えます。その際、管理職になることを前提にキャリア面談を進めるのではありません。専門性を高める道なども選択肢として認めながら、管理職を経験することで得られる視点やスキルが本人のキャリアと接続するのであれば、その関係を伝えます。

「管理職になるかどうか」から話を始めるのではなく、「将来どうなりたいか」からキャリアを考えることがポイントです。

「管理職になりたい」と思える環境を人事・会社側がつくる

管理職候補を増やすために人事が取り組みたいのは、社員へ働きかけることだけではありません。

管理職が過度な業務を抱えていたり、責任に対して十分な権限や待遇が与えられていなかったりする状況では、研修やキャリア面談だけで昇進意欲を高めることは難しくなります。そのため、本人への育成や情報提供と、会社側の環境整備を並行して進めることが必要です。

▼管理職候補を増やすための取り組み

本人への働きかけ

会社・人事側で整えること

管理職の役割や仕事を知る機会を設ける

管理職の業務量を見直す

小さなリーダー経験を積んでもらう

管理職手当・待遇を確認する

マネジメントを学ぶ機会を設ける

責任と権限のバランスを整える

成功体験を積み、自信につなげる

管理職を支援する体制を整える

Willやキャリアについて対話する

多様なキャリアの選択肢を整える

目指したいのは、すべての社員を管理職へ昇進させることではありません。管理職という仕事について正しく理解でき、必要な経験や支援を得たうえで、「自分のキャリアの選択肢になり得る」と考えられる環境を整えることが大切です。

まとめ

「管理職になりたくない」という社員に対しては、昇進を勧める前に、その背景にある理由を確認することが大切です。管理職の業務負荷や待遇に問題があるのか、仕事の魅力を知る機会がないのか、マネジメントへの不安があるのか、本人が別のキャリアを描いているのかによって、人事が取る対応は変わります。

そのため、必要に応じて管理職の働き方や待遇を見直しながら、段階的にリーダー経験を積む機会やマネジメントを学ぶ機会、キャリアについて考える場を整えることが重要です。こうした取り組みによって、社員が自身の将来を考える際の選択肢を広げられます。

リ・カレントでは、管理職研修や次世代リーダー育成をはじめ、人材育成・制度構築・組織開発を組み合わせ、企業ごとの課題に応じた支援を行っています。管理職候補の育成や、リーダーが育つ環境づくりに課題を感じている場合は、ぜひご相談ください。

人気記事ランキング