
【管理職の適性】プレイヤーとして優秀=管理職に向いている人? 失敗しない登用基準と3つの判断軸
管理職の登用において、「営業成績や専門スキルなどプレイヤーとしての実績」を重視して候補者を選抜したものの、登用後の組織運営や部下育成で課題が生じるケースに悩む人事担当者や経営者は少なくありません。
プレイヤーとして優秀であっても、管理職として求められる役割や能力、適性が備わっているとは限らず、選抜基準が実際の役割と合っていないことが、マネジメント上の課題につながる場合があります。
また、管理職への登用では、それまでの実績を評価して昇進する「卒業方式」の考え方だけではなく、管理職として求められる能力や役割を満たしているかという「入学方式」の視点で候補者を見極めることも重要です。
本記事では、管理職に向いている人を見極めるための考え方を整理するとともに、「能力」「経験」「実績」の3つの判断軸を基に、管理職候補をどのような基準で選抜すればよいのかを解説します。
「管理職候補」と「次世代リーダー候補」は似ているようで異なる概念です。次世代リーダーについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
目次[非表示]
- 1.管理職の登用で生じるミスマッチ
- 2.管理職に向いている人・向いていない人の特徴
- 3.「管理職に向いている人」を見極める3つの判断軸
- 3.1.①求められる「能力(Capabilities)」
- 3.1.1.ピープルマネジメント・対人関係力
- 3.1.2.課題設定・コンセプチュアルスキル(概念化能力)
- 3.1.3.意思発信力・チェンジリーダーシップ
- 3.2.②求められる「経験(Experiences)」
- 3.2.1.他者を育成・支援しながら成果を生み出した経験
- 3.2.2.困難を乗り越える過程での内省と改善の経験
- 3.2.3.部門横断で協働した経験
- 3.3.③求められる「実績(Performance)」
- 3.3.1.再現性のある成果
- 3.3.2.組織・仕組みへの貢献実績
- 4.管理職の資質や適性を客観的に測る「アセスメント」の活用
- 5.管理職登用後に必要な「マインドセット」の支援
- 6.まとめ
管理職の登用で生じるミスマッチ
管理職候補を選ぶ際、現在の業務成績だけを評価基準にしてしまうと、登用後に期待した成果につながらないケースがあります。
管理職登用は「入学方式」の視点で考える
主任や係長クラスまでの昇進は、「現在のポジションで求められる役割や能力を十分に果たしているため、次の職位へ進む」という「卒業方式」で考えられることが多くあります。これまでの実績や成果が、そのまま昇進の判断材料となるケースです。
一方、課長以上の管理職では、「次のポジションで求められる役割や責任を担えるか」という視点で登用を判断する「入学方式」の考え方が重視されます。つまり、プレイヤーとして高い成果を上げているだけではなく、管理職として組織を運営し、部下を育成する役割を担えるかが重要になります。
そのため、管理職としての「入学ライン」をどこに設定し、どのような基準で見極めるかが、登用後の活躍を左右する重要なポイントです。
プレイヤー実績だけで選抜するリスク
プレイヤーとしての業績だけを重視して管理職へ登用すると、部下とのコミュニケーションや育成に課題が生じ、組織全体の成果につながりにくくなる場合があります。
また、プレイヤーの意識から抜け出せず、業務を自分で抱え込んでしまう「巻き取り型マネジメント」に陥るケースも見られます。
部下に仕事を任せる機会が減ることで、成長の機会を十分に確保できず、結果としてチーム全体の負荷が高まり、人材育成も進みにくくなります。
管理職に求められる役割と必要な能力の違い
ここでいう「管理職」とは、高い業績を上げるプレイヤーではなく、経営方針を現場へ落とし込み、部下の育成や組織運営を通じてチーム全体の成果を生み出す役割を担う人材を指します。
そのため、管理職には、実務を遂行する「テクニカルスキル」だけでなく、周囲と円滑な関係を築く「ヒューマンスキル」や、物事の本質を捉えて課題を解決へ導く「コンセプチュアルスキル」が求められます。
個人で成果を上げることと、組織やチームとして成果を生み出すことでは、求められる役割が大きく異なります。プレイヤー時代と同じ働き方では対応が難しい場面もあるため、管理職としての役割を踏まえた視点や行動への転換が重要です。
管理職に向いている人・向いていない人の特徴
人事担当者が管理職候補を見極める際は、業績だけでなく、日々の行動や周囲との関わり方にも目を向けることが重要です。
管理職に向いている人と向いていない人には、それぞれ以下のような特徴が見られます。
▼管理職に向いている人の例
チーム全体の成果を意識して行動できる
フォロワーシップを発揮し、周囲と協働できる
課題を整理し、状況に応じて意思決定できる
部下の成長を支援し、適切に仕事を任せられる
▼管理職に向いていない人の例
自分の成果を優先し、仕事を抱え込みやすい
周囲を巻き込まず、一人で仕事を進めようとする
意思決定を先送りしやすい
部下に仕事を任せることが苦手
ここでいう「フォロワーシップ」とは、単に上司の指示に従うことではなく、組織の目標達成に向けて自ら考え、上司や周囲へ主体的に働きかける姿勢を指します。
ただし、管理職に向いていない人の特徴が見られるからといって、直ちに管理職に向いていないと判断できるわけではありません。こうした傾向は、経験や研修、周囲からの支援を通じて改善できる場合もあります。
そのため、管理職候補を選抜する際は、一時的な業績や性格だけで判断するのではなく、現在の行動特性に加え、管理職として成長していく可能性も含めて総合的に見極めることが重要です。
「管理職に向いている人」を見極める3つの判断軸
管理職への登用では、現在の業績だけでなく、「管理職として求められる役割を担えるか」という視点で候補者を見極めることが重要です。ここでは、管理職の適性を判断する際に確認したい3つの判断軸を紹介します。
①求められる「能力(Capabilities)」
管理職には、業務を管理するだけでなく、人を巻き込みながらチームや組織の成果を生み出すことが求められます。そのためには、部下との関わり方や課題解決、組織を動かすための幅広い能力が必要です。
ピープルマネジメント・対人関係力
管理職には、部下との信頼関係を築き、一人ひとりの力を引き出しながらチーム全体の成果につなげる役割があります。
対話・コーチング力:1on1などを通じてメンバーの価値観やキャリア、強みを理解し、自律的な行動を促す能力
心理的安全性を高める力:安心して意見や挑戦ができる環境をつくり、率直なコミュニケーションを促す能力
エンパワーメント(権限移譲)力:メンバーの経験や適性に応じて適切に仕事を任せ、成長を支援する能力
課題設定・コンセプチュアルスキル(概念化能力)
管理職には、目の前の業務だけでなく、組織全体や将来を見据えながら、本質的な課題を捉える視点も求められます。
視野・視座・視点を広げる力:経営視点や中長期的な視点に立ち、PEST分析や3C分析なども踏まえて物事を考える能力
問題発見・構造化力:表面的な現象だけで判断せず、原因を整理・分析し、解決につながる打ち手を考える能力
意思発信力・チェンジリーダーシップ
管理職には、組織の目指す方向性を示し、周囲を巻き込みながら変化を推進する役割も求められます。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の発信:組織やプロジェクトの目的・価値を自分の言葉で伝え、メンバーの共感や納得感を高める能力
意思決定力と柔軟性:正解のない状況でも判断を下し、環境や状況の変化に応じて柔軟に軌道修正する能力
②求められる「経験(Experiences)」
管理職には、過去の実績だけでなく、多様な経験を通じて培った判断力や対応力も求められます。
他者を育成・支援しながら成果を生み出した経験
管理職には、自分自身が成果を上げるだけでなく、後輩の育成やメンバーへの支援を通じて、チームとして成果を生み出した経験が求められます。人に仕事を任せ、一人ひとりの力を引き出しながら目標を達成した経験は、管理職としての土台になります。
困難を乗り越える過程での内省と改善の経験
目標未達やトラブル、人間関係の課題などに直面した際、自身の行動や考え方を振り返り、改善につなげた経験は、管理職として成長していく上で重要です。
部門横断で協働した経験
自部署だけでなく、他部門や社外パートナーなど、異なる立場や価値観を持つ関係者と協働し、合意形成を図った経験も重要です。こうした経験は、組織全体を見渡しながら周囲を巻き込み、成果につなげる力を養うことにつながります。
③求められる「実績(Performance)」
管理職への登用では、「どのような成果を上げたか」だけでなく、「どのようなプロセスで成果を生み出したか」も重要な判断材料となります。
再現性のある成果
市場環境や偶然に左右された成果ではなく、「なぜ成果につながったのか」「どのような工夫を行ったのか」を自分の言葉で整理し、他者へ再現可能な形で共有できる成果プロセスが求められます。
組織・仕組みへの貢献実績
個人の売上や担当業務の成果だけではなく、業務プロセスの標準化や効率化、ナレッジ共有、職場風土の改善など、組織全体へよい影響を与えた実績も管理職として評価したいポイントです。
管理職の資質や適性を客観的に測る「アセスメント」の活用
前述した3つの判断軸を踏まえたうえで、それらを客観的に評価する方法としてアセスメントがあります。客観的な指標を取り入れることで、選抜基準の透明性や納得感を高めやすくなります。
多面的な評価を取り入れる
360度評価では、職位ごとに求められる行動特性を基に、上司だけでなく同僚や部下など複数の立場から評価を行います。そのため、管理職候補の行動特性や周囲への影響を、多面的な視点で把握しやすくなります。
例えば、「上司からは高く評価されている一方で、部下への指導では威圧的な言動が見られる」「他部署との連携に課題がある」といった、一面的な評価だけでは見えにくい傾向を把握できることもあります。
自己評価と周囲の評価のギャップを確認することで、登用後の育成ポイントを整理しやすくなる点もメリットです。
アセスメントで潜在的な価値観やモチベーションを可視化する
アセスメントを活用し、本人が仕事で大切にしている価値観や、モチベーションの源泉を把握することも有効です。
例えば、「モチベーション・トレンド診断」や「フォロワーシップ診断」を活用すると、どのような環境や役割で力を発揮しやすいかを客観的に把握しやすくなります。
こうしたデータを選抜時の判断材料として活用することで、経験や実績だけでは見えにくい特性も踏まえた検討が可能になります。また、人事担当者や経営層の間で評価基準を共有しやすくなり、選抜プロセスの透明性や候補者本人の納得感の向上にもつながります。
管理職登用後に必要な「マインドセット」の支援
「管理職に向いている人」を適切に見極めたとしても、最初から理想的な管理職として活躍できる人ばかりではありません。そのため、登用後のフォローアップや育成を通じて、管理職として成長できる環境を整えることが重要です。
スキルだけでなく「あり方(マインド)」を育てる
業務管理や部下育成などのスキルを身につけるだけでなく、チーム全体の成果を生み出す視点や、部下の成長を支援するという管理職としての役割や姿勢を身につけることも重要です。
また、プレイヤーとして自ら成果を上げる立場から、メンバーの力を引き出し、組織全体の成果を最大化する立場へと意識を切り替えることも欠かせません。管理職として求められる役割や期待を理解することで、登用後の立ち上がりや現場での行動変容につながります。
組織全体でリーダーシップ×フォロワーシップを強化する
管理職一人の成長だけでは、組織全体の変化にはつながりません。管理職だけでなく、組織全体で主体的に役割を果たし、支え合う環境づくりが重要です。
リ・カレントでは、診断・測定、教育研修、人事制度・組織開発を組み合わせながら、リーダーシップとフォロワーシップを組織全体で育む支援を行っています。経営層とともに管理職に求められる能力要件を整理し、現場での行動変容まで見据えた人材育成サポートをしています。
まとめ
管理職への登用では、プレイヤーとしての業績だけで候補者を選抜するのではなく、管理職として求められる役割や能力を担えるかという視点で見極めることが重要です。そのためには、「能力」「経験」「実績」の3つの判断軸で、多面的に評価するとともに、360度評価や適性診断などのアセスメントも活用しながら、客観的な視点を取り入れることが大切です。
また、管理職への登用はゴールではありません。登用後も、管理職としての考え方や行動を身につけられるよう継続的に育成・支援することで、部下育成や組織運営の質が高まり、組織全体の成果にもつながります。
リ・カレントでは、管理職候補の選抜基準の設計から、アセスメントを活用した適性の把握、登用後の育成・定着支援まで、一貫した人材育成・組織開発を支援しています。管理職の選抜や育成に課題を感じている場合は、自社の状況に合わせた育成の進め方について、ぜひお気軽にご相談ください。

