
「次世代がいない」と言われたら読む記事|次世代リーダーの定義・選抜基準・育成設計の進め方
経営層から「未来の経営人材を育てろ」と指示を受け、頭を抱える人事担当者の方は多いのではないでしょうか。
いざ、次世代リーダー育成に取り組もうとしても、「どんな人材を対象にすべきか」「期間や人数、成果指標はどう設定するのか」と、迷うことは少なくありません。
この記事では、次世代リーダー育成の基本的なデザイン方法について解説します。組織の未来を牽引するリーダーを育てるためのヒントを、「今さら聞きにくい」基礎からすべてお伝えします。
「次世代がいない」話が会議で出たとき、まず参考にしていただける記事です。ぜひブックマークし、自社の状況と照らし合わせてお使いください。
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次世代リーダー育成が経営課題として注目される理由
2000年代以降、人事戦略の重要課題となっている「次世代リーダー育成」。その背景には、どのような組織事情が潜んでいるのでしょうか。
「次世代リーダーがいない」という言葉が示す"本当の危機"
経営層が口にする「次世代リーダーがいない」という言葉には、大きく分けて二つの意味があります。一つは「中堅社員が育っていない」という現場で起こっている目の前の問題、もう一つは「未来の経営人材がいない」という事業経営に直結する中長期的な問題です。
なかでも、多くの企業が危機感を抱いているのが、後者の「未来の経営人材がいない=次期経営幹部候補の不在」です。現在の管理職(55〜57歳)の役職定年が迫るなか、これまでの事業を維持するだけでなく、新規事業や組織変革を牽引できる人材がいないことが最大の悩みといえます。
サクセッションプランが求められる時代へ
こうした状況を打開するため、近年は「サクセッションプラン(後継者育成計画)」が注目されています。これは将来の経営人材育成を目的としたもので、人的資本経営とも深く結びついている経営戦略のひとつです。
ここでいうサクセッションプランとは、単に経営層や重要ポジションの欠員ポストを埋めるだけでなく、自社の将来を見据え、戦略的にリーダー候補人材をプールし、育成し続けるしくみのことです。このような育成計画が機能しているかどうかは、企業価値の評価にも影響を与えます。そのため、「誰を育てるか」という選抜の視点に加え、「いかに育てるか」というプロセスも重要になります。
そもそも「次世代リーダー」とはどんな人材を指すのか
では、育成の対象となる「次世代リーダー」とは、具体的にどのような人材なのでしょうか。一般的な管理職候補との違いを整理しながら定義を確認していきましょう。
管理職候補と次世代リーダーは似て非なるもの
次世代リーダーを育成する際、多くの企業が「優秀な管理職候補」と同じように捉えてしまう傾向がありますが、両者に求められる役割は異なります。
ここでいう次世代リーダーとは、「必要な組織変革を起こし、未来の事業や組織を創り出す人材」を指します。自部門の最適化にとどまらず、全社的な視点を持ち、周囲を巻き込みながら変革を推進するリーダーシップが求められます。
期待される役割 | 管理職候補 | 次世代リーダー |
業務の焦点 | 業務管理が中心 | 経営視点が必要 |
成果の範囲 | 部門成果を担う | 事業変革を担う |
最適化の視点 | 現場最適化 | 全社最適化 |
まずは、期待役割を言語化する
次世代リーダーの育成を始める前に、まずは自社においてどのようなリーダーが必要なのかを言語化します。
・将来的に担ってほしいポストはどこか
・どのレベルの意思決定を期待するのか
・どのような能力が必要なのか
を明確にしましょう。
さらに、ここでいう「リーダーシップ」がどのような行動を指すのかも定義します。チームを引っ張る力なのか、他部門と協働して新しい価値を生み出す力なのか、自社の経営人材として期待する役割を具体的に整理することで、育成方針の軸のブレを防ぐことができます。
業績だけで選ぶと失敗する
次世代リーダー選抜の際によく陥りがちなのが、単純に「業績」だけで候補者を選んでしまうケースです。
高業績者はプレイヤーとしては優秀ですが、人を動かして成果を出すことは苦手でマネジメントやリーダーシップをうまく発揮できないことがあります。逆に、派手な業績は上げていなくても、エンゲージメントが高く、組織の問題を自分ごと化して考えられているポテンシャル人材もいます。
未来の経営人材となる次世代リーダーを育てるには、選抜において、業績だけでなく組織課題に対する当事者意識、論理思考力、ポテンシャルなども含めて多角的に見極め、選抜することが大切です。
対象人数はどう決める?サクセッションプランとの関係
育成の対象者を何人に設定すべきかというご相談もよくいただきます。対象人数は、企業規模やサクセッションプランの目的によって適切なアプローチが異なります。
人数は「将来ポスト」から逆算する
次世代リーダーの育成人数は、将来的に必要となるポストの数から逆算して設定するのが基本です。
例えば、本部長候補、部長候補、課長候補など、どの階層のリーダーをいつまでに何名育成する必要があるのかを整理します。そこから逆算して、候補者層として何名を選抜するかを算出します。
推奨は「母集団+選抜層」の二階建て設計
理想的なのは、母集団型と選抜型を組み合わせた二階建ての設計です。
まずは階層別研修で将来の候補者を広く育成(母集団形成)し、そのなかから特にポテンシャルの高い人材を次世代リーダー候補として選抜し、重点的に育成します。この二階建て設計によって、持続可能なリーダーシップ・パイプラインを形成することができます。
行動変容を測定する指標を置く
また、育成の成果を測るためには、対象者の「行動変容」を測定する指標を置くことが大切です。ここでいう行動変容とは、学んだ知識を現場での具体的な実践に移し、周囲への働きかけが変わることを指します。
具体的には、360度サーベイを活用して周囲からの見え方の変化を確認したり、上司からの定期的な評価を指標にしたりします。また、部門横断プロジェクトへの参加率や、自発的な経営提言の数など、目に見えるアクションを数値化することも効果的です。
サクセッション指標も設定する
さらに、経営層に対して育成の成果を示すためには、サクセッション(後継者育成)の観点からの指標も設定する必要があります。
例えば、重要ポストに対して適切な候補者がどの程度プールされているかを示す「後継者充足率」や、実際に選抜された人材の「昇格率」「定着率」、そして「重要ポストへの登用率」などが挙げられます。これらの指標を追いかけることで、育成プログラムが組織の成長にどの程度寄与しているかを可視化できます。
なお、研修の現場実践率を3倍に高める学習デザインについてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。
研修で終わらせないしくみづくりのポイント
次世代リーダーの育成は、数回の集合研修を実施するだけで完了するものではありません。学んだことを現場で生かし、継続的に成長を促すためのしくみづくりについて解説します。
次世代リーダー研修単体では成果は限定的
知識のインプットを中心とした研修単体では、実際のリーダーシップや経営視点を身につけるには限界があります。現場での実践と紐づけるしくみが必要です。
例えば、高難度な課題へ挑戦する機会や経営陣と直接対話する機会を設け、経営のリアルな課題に触れること。あるいは、現在の能力より少し高いレベルの業務を任せる「ストレッチアサインメント」や、他部署・社外で学ぶ「越境学習」を取り入れることが効果的です。また、上位層がメンターとして伴走するメンタリング制度も、気づきを促すうえで重要です。
人材育成を経営プロセスに組み込む
育成を一時的なイベントで終わらせないためには、人材育成を経営プロセスそのものに組み込む視点が求められます。
サクセッション会議(人材開発会議)と連動させ、定期的に候補者の状況を議論すること。年次で選抜と評価のサイクルを回すしくみ化。そして、設定したKPIの定例レビューや、一人ひとりの育成履歴を可視化して継続的にフォローすることがポイントです。こうしたしくみが整うことで、企業は自律的に次世代リーダーを生み出す力を得ることができます。
まとめ
「未来の経営人材がいない=次世代リーダーが育っていない」というお悩みには、さまざまな要因が絡み合っています。しかし、それら一つずつに最適解が存在します。まずは自社の未来を牽引する「人材の要件を定義」し、「多角的に人材を見極め選抜」すること。そして、行動変容や経営へのインパクトを測る「明確な指標」を設け、実践的な経験を通じて「育成し続けるしくみ」が重要です。
本記事でご紹介したポイントを活用し、自社の状況に合わせた次世代リーダー育成のしくみをデザインしていただければ幸いです。

